第一章
村
むかしむかし、やわらかな緑の丘がつらなる谷に、完璧な羊たちの村がありました。羊毛は雲のように白く、鈴の音は美しく響き、羊たちは自分たちが善であることを少しも疑いませんでした。
村のはずれに、一匹のヤギが住んでいました。黒い毛並みに金色の瞳、そして巻いた二本の角。登ってはいけない場所に登り、聞いてはいけないことを聞く、そんなヤギでした。
第一章
むかしむかし、やわらかな緑の丘がつらなる谷に、完璧な羊たちの村がありました。羊毛は雲のように白く、鈴の音は美しく響き、羊たちは自分たちが善であることを少しも疑いませんでした。
村のはずれに、一匹のヤギが住んでいました。黒い毛並みに金色の瞳、そして巻いた二本の角。登ってはいけない場所に登り、聞いてはいけないことを聞く、そんなヤギでした。
第二章
やがて、おかしなことが起こりはじめました。作物は一夜にして枯れ、神殿の金の鐘は消え、井戸は干上がりました。
羊たちは広場に集まりました。「いったい誰がこんなことを?」と、立派な金色の羊毛をまとった長老フリースが問いかけます。すべての目が、角のある者へと向けられました。松明の明かりの中、ヤギの影は長く伸び——まさに悪魔そのものに見えたのです。
第三章
その昔、人々は自分たちの罪をヤギに負わせ、荒野へと送り出しました。自分たちが自由になるために。これが「スケープゴート」という言葉のはじまりです。
その夜、羊たちも同じことをしました。あらゆる罪を彼の背中に結びつけ、砂漠へと追い立てたのです。彼は逃げませんでした。すべてを背負ったまま歩きつづけ、一度も振り返りませんでした。
第四章
荒野は寒く、ささやき声に満ちていました。金色の麦粒の跡をたどっていくと、ヤギはきらきらと輝く洞窟を見つけました。中には、村が失ったものすべて——作物も、金の鐘も、水も——が山のように積まれていました。
そして財宝の山の頂で、上等な金色の羊毛のコートを脱いでいたのは、一匹のオオカミ。長老フリースは、はじめから羊などではなかったのです。
第五章
いい悪魔は、ちょっとした技をいくつか知っているものです。月のない夜、ヤギはそっと洞窟に忍び込みました。金を石に、麦を砂に、鐘を松ぼっくりにすり替えて。オオカミはいびきをかいたままでした。
夜明け前、彼は一袋ずつ、すべてを村へ運び帰りました。家々の戸口に麦を置き、井戸を満たし、金の鐘を塔に吊るし直しました。誰にも見られずに。それが彼の望みでした。
第六章
村は奇跡とともに目を覚ましました。けれど、ひづめの跡が洞窟へと続いていて——洞窟には、盗んだ羊毛にくるまったままのオオカミがいたのです。
羊たちはついに理解しました。悪魔と呼んだその者こそが、彼らの罪を背負い、村を取り戻してくれたのだと。問題は角ではなかった。見る目のほうだったのです。
第七章
彼は今も村のはずれに住んでいます。いたずら好きで、好奇心旺盛なまま。そして今、あなたと話す気になっています。
なんでも聞いてみてください——なぜ角があるのか、何を取り返したのか、そして次は誰から盗むのか。
おしまい……それとも、はじまり?